溶接作業に使う作業服の選び方とは?お手入れ方法や取り扱い方法も解説 2022.03.08
溶接作業における作業服の役割
溶接は、金属の部品を電気やガスの熱を利用して溶かし部品同士を接合する作業で、なかでもアーク放電を利用して溶接する「アーク溶接」が一般的です。
この作業では火花が飛び散ったり高温になったスパッタ(飛散物)が飛んできたりすることがあるため、作業服は火傷や炎症といったケガを防ぎ、安全を確保する大切な役割を担っています。
作業服に主に使われる繊維
安全を確保するための作業服には、どのような繊維が使われているのでしょうか。ここからは、化学繊維と天然繊維それぞれの特徴とあわせて、溶接作業服に適した繊維について紹介します。
化学繊維とは
化学繊維は、石油や高分子化合物などから作られた人工的な繊維です。
石油が主原料の合成繊維(ポリエステル、ナイロンなど)、木材などの繊維やペットボトルが原料の再生繊維(レーヨン、キュプラなど)、天然物質と化学物質組み合わせた半合成繊維(アセテート、トリアセテートなど)の3種類に分けられます。
天然繊維とは
天然繊維は、植物や動物などの天然素材から作られた繊維です。植物が原料の植物繊維(綿、麻など)、動物から得られる動物繊維(シルク、ウールなど)の2種類に分けられます。
溶接作業に使う作業服の選び方
溶接作業中に火花や紫外線などから身を守るためにも、作業服選びは慎重に行う必要があります。露出の少なさ火や熱に強い素材はもちろんですが、長時間同じ姿勢で作業をしたり無理な姿勢で作業を行ったりする場合もあるため、動きやすさも大切です。
ここからは、溶接作業に使う作業服選びのポイントや購入時の注意点を紹介します。
購入する際は優良な通販業者を利用する
作業服を購入する際、ホームセンターや作業服専門店などの店舗で購入される方も多いでしょう。溶接作業においては、防炎性と伸縮性が両立された高品質の作業着が求められるため量産品の多い店舗では入手が難しいのが現状です。
そのため、特殊な製法で作られた高品質な溶接用の作業服を購入するには、通販業者を利用するのが適していると言えます。
防炎性のある素材を使用しているか確認する
火花やスパッタが発生する溶接作業の現場では、防炎性のある素材を使用した作業服を着用することは必須でしょう。ここからは、防炎性の高い素材についてそれぞれの特徴とあわせて紹介します。
難燃素材のものを選ぶ
難燃素材は人工的に燃えにくい性質を持って作られた化学繊維で、素材が熱分解されることや火災による分解ガスの発生を抑える機能を持っています。そのため、火がついても燃えにくく燃え抜けることはありません。
不燃ではないため、溶接作業は常に注意して行いましょう。
綿素材のものを選ぶ
綿素材は、火がつくとその部分だけ燃え抜くため、燃え広がることを防げます。織物にしてから難燃剤を付着させ防炎加工することにより、さらに燃えにくくすることが可能です。
こちらも、不燃ではないため注意して作業を行いましょう。
伸縮性があるか確認する
溶接作業を行う際の姿勢は体をかがませた下向姿勢が一般的ですが、他にも横向姿勢、立向姿勢、上向姿勢になる場合もあるでしょう。
様々な姿勢で溶接作業を行うため、作業服には動きやすさが求められます。防炎性に加え、伸縮性も備えた作業服を選ぶようにしましょう。
外国製品の場合はサイズをしっかり確認する
通販業者によっては、珍しい外国製の作業服を扱っている場合もあります。外国製の作業服は、メーカーによってサイズが異なることが多いため、購入の際は注意が必要です。
届いたらデザインや配色が全く違ったと言うトラブルもあるため、事前に通販業者の評判を調べてから購入するようにしましょう。
長時間の現場ならファン付きウェアを選ぶ
溶接作業は暑さを伴う仕事であるため、長時間作業を行う際は、生地の内側に風を送るファンが付いたウェアを着用しましょう。ファン付きウェアは暑さを和らげ、快適に作業が行えますが、耐火性の高い生地のものを選ぶようにしてください。
また、より安全を確保するためにも、ウェアの下には綿などの燃えにくい素材をインナーとして着用すると安心です。
ポリエステル素材の作業服が溶接作業に不向きな理由
溶接作業の現場において、ポリエステル素材はとても不向きな素材と言われています。ここからは、ポリエステル素材の作業服が溶接作業に不向きな理由について解説しますので参考にしてください。
静電気が発生しやすいため
ポリエステル素材はマイナスに帯電しやすい素材のため、プラスに帯電しやすい素材と組み合わされることによって、強い静電気を発生させます。溶接作業の現場では静電気はとても危険で、大きな事故に繋がり兼ねません。
帯電防止の作業服や、綿や麻などのマイナス素材と組み合わせ、静電気を発生させにくくするようにしましょう。
火に弱く燃えやすいため
ポリエステル素材は、石油が原料であるため燃えやすい素材です。ポリエステル100%の生地に火がついてしまうとすぐに燃え広がり、溶けて高温になるなどとても危険です。
火災に繋がる事故や火傷の原因にもなるため、溶接作業ではポリエステル素材の作業服は避けた方が良いでしょう。
なぜ作業服にはポリエステル素材が多く使われるのか
ポリエステルは丈夫で耐久性に優れているため洗濯に強く、速乾性もあるのが特徴です。また、ポリエステルは安価で購入できるため、一般の作業服にも多く使われており、溶接作業以外での作業服としては適した素材と言えます。
溶接作業に使う作業服のお手入れ方法
溶接作業を行っている限り作業服に汚れが付いてしまうのは当然ですが、他の衣類と同じ洗濯方法では汚れが取り切れないこともあります。
ここからは、溶接作業に使う作業服のお手入れ方法を紹介します。
手で揉みこむようにして洗う
溶接用の作業服は火花などで穴が生じないように厚手で固い生地で作られている上、作業時には普通に生活している時には付着しない油汚れやサビ汚れ、鉄粉などが付着します。
強引に洗濯機で洗ってしまうと作業服が傷んでしまうだけでなく、油汚れやさび汚れで洗濯機も壊れてしまいます。洗濯する前に必ず汚れを払い落としてから、手で揉みこむようにして洗いましょう。落ちにくい汚れは、直接洗剤を染み込ませてから揉み洗いすると良いでしょう。
乾かす時間を余分に取っておく
厚手で固い生地で作られた溶接用の作業服はとても乾きにくくなっています。また、綿生地で作られたものが多いのも、乾きにくい要因です。
生乾きを避けるためにも、洗濯後は乾かす時間を多く取っておく必要があるでしょう。
乾かす際にはしっかり固定する
吸水性のある綿生地で作られ、さらに厚手で固い溶接用の作業服は、洗濯後はかなりの重量になります。また、前述したように乾かす時間も長く取る必要があるため、途中で落下しないようしっかりと固定して乾かすようにしましょう。
溶接作業に使う作業服の取り扱い上の注意点
より安全に溶接作業を行うためにも、作業服の取り扱いには細心の注意を払いましょう。確認を怠ると、溶接作業に支障が出たり大きな事故に繋がったりする危険性もあります。
ここからは、溶接作業に使う作業服の取り扱い上の注意点を紹介します。
縮みすぎた場合は新しい作業着に交換する
溶接用の作業服に使用されている綿生地は、水に濡れると縮む性質があります。そのため、何度も洗濯を繰り返しているうちに、生地全体が縮み購入時のサイズよりも小さくなってしまいます。
作業服が縮み体を動かしにくくなってきたと感じたら、新しいものと交換するようにしましょう。
穴が生じた場合はそのまま放置しない
作業服に穴が開いてしまったらすぐに新品と交換するようにしましょう。穴が開いた作業服を放置してしまうと、穴に直接火花が入り込んで火傷をしてしまったり、穴に何かをひっかけて転倒してしまったりする可能性もあります。
また、綿生地の作業服であっても内側には化学繊維を使用している場合があり、火がつくとすぐに燃え広がってしまう可能性もあるでしょう。
新品との交換が難しい場合は、フェルトを使用して穴を塞ぎましょう。この際、安価なフェルトを使用すると飛び出た細かい繊維に引火する危険性があるため、できるだけ質の良いフェルトを使用しましょう。
溶接作業における作業服の選び方や取り扱い方法を把握しよう
火花が飛び散り、様々な姿勢で作業を行わなくてはいけない状況下での作業服は、燃えにくく動きやすいものを選び、より安全で快適に作業を行えるよう努めることが大切です。
また、こまめに作業服のメンテナンス方法を把握することにより、自身の身を守るだけでなく、作業現場全体の事故につながるリスクを抑えることができます。
この記事を参考に好みにあった作業服を選ぶことで、より気持ちよく溶接作業に取り組むことができるでしょう。